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自然の中で遊ぶ

園だより

梅雨空が続くここ数日ですが、時折、園庭に日が差し込むと、園庭へ駆け出していく子どもたち。

 

土、水、風、木々に生い茂る葉や実、虫や鳥など、豊かな自然が桐朋幼稚園にはあります。

 

入園期、お母さんと離れるのが不安で泣き続けていた3歳児の子どもも、ふと他の子どもが見つけたカマキリを見ると涙が止まり、今まで泣いていた気持ちはどこへいったのか、カマキリの世界に引き込まれたかのように、心を奪われる様子があります(ふと現実世界に戻ってくるとまた泣き始めることもありますが)。

 

4歳児、2人の女の子は、大雨でなければ、ほぼ毎日園庭に出て、2人で「おうちごっこ」をして遊んでいます。2人の遊びに欠かせないものは、お家ごっこに欠かせない「ごはん」を作るための土や水、草花といった自然の素材です。

ある日、前日の夜から翌朝まで雨が降き、園庭には大きな水たまり。朝、登園してきた2人は、早速遊び用のフライパンやカップ、水を汲むヤカン、落葉や木の実などを集め、大きな籠を裏返してキッチンに見立て、「おうちごっこ」が始まりました。

 

2人の会話が弾みます。

「今日はさいっこう(最高)」

「ねえねえ、こっちが調子いいんじゃない?」

「え、どれどれ。そうだね。あっちもいいよ」

「そうなの?どこ?…あ、ほんとだ〜」

「じゃあ、ここにしよう!」

「今日はチョコレートね」

「いいね、じゃあお水持ってくる」

 

なんの話かと2人の様子をよく見ると、大きな水たまりによって出来た「泥」の具合いを話していたのです。

道具と場所が整うと、2人はチョコレート作りに没頭。水が多すぎると緩くなって形にならなかったり。土が多すぎてもパサパサになってしまう。「土」「水」「また土」と繰り返し注ぎ込みます。この「加減」「調整」はこれまでの泥土との触れ合いで培ってきた熟練の技が注ぎ込まれています。2人はしばらくの間、園庭にしゃがみ、泥土との向き合いに浸り込んでいました。

 

 

この2人の遊びから、自然とのかかわりが子どもの育ちに培ってくれるものを感じずにはいられません。

自然と触れ合うなかで子どもの中に育まれていることについて考えていると、関東学院大学の久保健太さん(本園の共同研究者)の文献に触れる機会がありました。

 

久保さんは、「自然の中で過ごすと、人はどうして仲良くなれるのか?」という問いに対し、

「自然の環境は動いている。(中略)人が動かしているのではなくて、人の意図を超えたところで動いている」

「動いている環境の中に、ともに身をおいている」

「動いている環境は、子どもたちの『不思議だな』『不思議だね』を触発する」

「そうして、その環境に身を置いている人間どうしが、ともに驚き合う」

と、その理由を語られています(『自然の中で過ごすと、人はどうして仲良くなれるのか』/ 久保健太著 発達159 自然と子ども ミネルヴァ書房。一部、久保さんご本人に書き足して頂きました)。

 

2人の女の子たちの遊びにも、このような事が重なって映ります。「美味しいチョコを作りたい」その目的を共有し、一刻一刻と乾いていく泥土を、自らの手で触れ、楽しさを生み出そうと、かかわり合っています。

言葉を持たない自然は、多くを語らずに、そこにあるだけで、子どもたちに様々な学びを与えてくれる。桐朋幼稚園では、豊かな自然の中で遊びながら、心や身体、感性、人とのかかわりを育んでいくことなど、大事にしたいと考えています。

 

 

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